不動産売買契約はキャンセルできる?具体例をまじえて詳しく解説
不動産売買契約のキャンセルは、さまざまな状況で認められています。
手付金の放棄による解除から、契約不適合による解除まで、複数の選択肢があります。
本記事では、契約のキャンセルの可否や、キャンセルが可能となる具体的なケースなど、不動産売買契約のキャンセルに関する情報について解説します。
不動産売買契約のキャンセルは可能なのか
結論としては、不動産売買契約は契約締結後でも解約することが可能です。
物件の引き渡し直前であっても、契約を取り消すことができます。
民法では、契約の解約を「解除」という形で定めています。
解除とは契約を無効にし、契約を結ぶ前の状態に戻すことです。
ただし、契約の解除を申し出た側には原状回復の義務が生じ、解除のタイミングによって違約金や損害賠償金が発生する場合があるので注意しましょう。
気持ちが変わったことによる契約の解除も法律上は認められていますが、多額の費用負担が生じる可能性があるので、慎重に検討することが大切です。
不動産売買契約のキャンセルが生じる主なケース
ここからは、不動産売買契約は解約が認められているという前提を踏まえ、どのような場合に解約となるのか解説します。
手付金を放棄することによる契約解除
不動産の売買契約をキャンセルする際、売買代金支払い前に売買価格の5~10%程度を手付金として不動産会社へ支払うのが一般的な流れです。
手付金は物件購入の意思を示すものであり、特別な事情がない限り、この金額は最終的な売買代金に含まれます。
買主側が契約を解除したい場合、支払済みの手付金を放棄することで契約を終了させることができます。
また、売主側から契約を解除する際は、手付倍戻しという、受け取った手付金の2倍の金額を買主に支払うことでキャンセルが可能です。
取引相手による契約違反が発生したことによる契約解除
不動産売買契約において、売主または買主の一方が契約に違反した場合、契約を解除することが可能です。
契約違反の代表例としては、次のような場合が挙げられます。
- 買主が売買代金を期日までに支払わない場合
- 売主が支払い完了後も物件の引き渡しを行わない場合
- 売主が所有権移転登記の手続きに応じない場合
ただし、契約違反が発生したからといって、即座に契約解除ができるわけではありません。
相手に対して契約義務の履行を求めてから、妥当な期間が経過しても応じない場合に初めて、契約を解除する権利が発生します。
住宅ローン特約による契約解除
不動産購入の際に住宅ローンを利用する場合、住宅ローン特約を契約に組み込むことが可能です。
この特約があれば、ローン審査が通らなかった際でも、違約金や手付金の負担なく契約解除が可能です。
住宅ローン特約は、住宅ローンの利用を前提とした物件購入において重要な保証です。
ローンが組めないことが判明した時点で、追加の費用負担を避けながら契約を終了させることができます。
ただし、売買契約書にローン申し込み先の金融機関名が明記されていない場合、特約が適用されないケースがあるので、契約前に不動産会社へ詳細を確認しましょう。
消費者契約法に抵触したことによる契約解除
不動産取引において、業者が優位な立場を利用して消費者に不当な勧誘を行った場合、消費者契約法に基づいて契約を解除できます。
不動産会社による虚偽の説明や、威圧的な行為によって契約を結ばされた場合などが、その対象です。
消費者契約法は、事業者と消費者の間にある情報量や専門知識、交渉力の差を考慮して作られた法律で、消費者の権利を守り、公平な取引を実現することを目的としています。
ただし、この法律は事業者と消費者の間の取引にのみ適用されるという点に注意が必要です。
契約不適合による契約解除
不動産取引において、物件に重大な欠陥が見つかった場合や、契約時の説明内容と実際の状態が異なる場合を契約不適合と呼びます。
土地の地盤沈下や土壌汚染など、物件に重大な問題が発覚した際は、買主側に契約解除の権利が発生します。
契約不適合責任は、売主が負うべき重要な義務です。
買主が期待した物件の状態と現実が大きく異なる場合、売主の故意や過失の有無に関わらず、この責任が適用されます。
売主と買主の合意による契約解除
不動産売買契約は両者の合意によって成り立つものです。
売主と買主の双方が解除に同意すれば、契約のどの段階でも解約できます。
このような合意解除は、契約書に明記されていない場合でも有効です。
売買代金の支払い寸前であっても、両者が納得した上での解除なら認められます。
ただし、後々のトラブルを防ぐため、合意解除の証明として書面を残すようにしましょう。
クーリングオフ制度による契約解除
クーリングオフは消費者保護を目的とした制度で、一定の条件下で契約の無条件解除を認めています。
不動産売買では契約締結から8日以内であれば、クーリングオフによる契約解除が可能です。
ただし、不動産取引でクーリングオフを適用するには。「不動産業者の事務所以外の場所で契約を結んでいる」ことが要件を満たさなくてはいけません。
まとめ
不動産売買契約はキャンセルすることが可能です。
手付金の放棄からクーリングオフなど、さまざまな状況に応じた解約方法が法律で定められています。
ただし、キャンセルには違約金や損害賠償が発生する可能性もあるため、契約時には慎重に検討するようにしましょう。
不安な点がある場合は、不動産の専門家に相談することをおすすめします。
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弁護士紹介
昭和25年12月5日生まれ。慶應大学法学部を卒業。第二東京弁護士会に所属。弁護士として、30年以上のキャリアを持つベテランの弁護士です。
市民生活の法律問題全般や企業法務を幅広く扱っています。
また、社会問題への参画として日弁連裁判員本部委員を努めるなど、裁判員制度の推進・改善を目指す活動にも貢献。市民の皆様が裁判員として効率的に仕事ができるよう、有志で裁判員経験者との交流団体である裁判員経験者ネットワークを設立し、共同代表世話人として2ヶ月に一度、交流会を開催するなど、積極的な活動を続けています。
裁判員経験者ネットワーク https://saibanin-keiken.net/
弁護士 牧野 茂
- 所属団体
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- 第二東京弁護士会(17922)
- 第二東京弁護士会裁判員センター
- 日弁連刑事弁護センター幹事
- 著書
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- 裁判員裁判のいま(成文堂)
- 取調べの録画ビデオ~その撮り方と証拠化~(成文堂)
- 「民事陪審は実現できる」(二弁フロンティア2020年1月2月論考)
- 裁判員制度の10年(日本評論社)
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