損害賠償請求とは?慰謝料請求との違いについて
離婚問題で慰謝料請求と言う言葉をよく聞きますが、交通事故などの場合はその他に、損害賠償請求もあります。
どちらも賠償金が請求できることは分かりますが、その違いはどこにあるのでしょうか。
今回は、損害賠償請求と慰謝料請求の違いについて、詳しく解説していきます。
損害賠償請求と慰謝料請求はどう違う?
離婚や交通事故などで「慰謝料請求をする」と言いますが、「損害賠償請求」とも聞きます。
実はこの2つは全く別のものではありません。
損害賠償請求とは
「損害賠償」は、何かによって損害を与えられた場合に、その損害を補償するものです。
あらゆる損害に対する補償のことで、大きく「財産的損害」と「精神的損害」の2つに分かれます。
財産的損害は、さらに「積極損害」と「消極損害」の2つに分かれます。
たとえば、交通事故の場合の「積極損害」は次のようなものです。
- 治療費
- 交通費
- 車両修理費
- 弁護士費用
休業損害や、逸失利益(後遺症や将来得られるはずだった収入・利益)は「消極損害」にあたります。
慰謝料請求とは
損害賠償のうち「精神的損害」にあたるものを「慰謝料」と言います。
つまり、慰謝料は損害賠償に属する賠償になります。
慰謝料は精神的苦痛に対する賠償になるので、幅広い内容が当てはまるでしょう。
たとえばケガを負わされた場合、ケガの痛みによる苦痛だけでなく精神的にも苦痛が生じます。
物を壊された場合、新たに購入するなどして代わりのものが手に入る場合は損害賠償の「財産的損害」になります。
しかしそれが、亡くなった人の形見など、何物にも代え難い場合は「精神的損害」になるのです。
慰謝料の金額が決まる3つの基準とは
修理費や治療費にかかる損害賠償は、もとの金額があるため賠償額を出すのは難しくありません。
それに対し精神的苦痛は人によって感じ方が違うこともあり、算定方法が難しくなります。
そのため、慰謝料には算定基準があり、たとえば交通事故の場合は以下の3つです。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準(裁判基準)
ここからは交通事故を例にとって、それぞれの算定基準を詳しく解説していきます。
自賠責基準
自賠責基準は上で挙げた3つの算定基準の中で、最も低額の基準です。
自動車保険には事故を起こした際に被害者に補償するための保険で、人身事故にのみ補償される賠償保険のため強制的に加入するものです。
そのため、事故に遭った被害者の最低限の補償が目的となっていて、次のような場合は支払われません。
- 加害者のケガ
- 自動車の修理費用
- 単独事故
- 物に対する損害
被害者へ損害を補償することが目的の保険のため、加害者が保険請求を拒否した場合は被害者自身が保険会社に請求できます。
任意保険基準
任意保険基準は、加害者が任意で加入している保険会社が提示する金額の基準になります。
その基準は保険会社によって違いがあり公開されていませんが、自賠責保険に比べてやや高額であることが一般的です。
しかし、任意保険の会社は被害者に支払う示談金が少ない方が利益に繋がるため、任意保険基準を低めに設定していると言われています。
そのため、保険会社が提示する金額は示談交渉によって、増額できる可能性があります。
弁護士基準(裁判基準)
弁護士基準は過去の交通事故裁判の判例をもとに、弁護士や裁判所が慰謝料を計算する算定基準です。
弁護士は、これで計算した金額を使って加害者の保険会社と交渉を進めていきます。
弁護士基準は通称「赤本」と呼ばれる「損害賠償額算定基準」と、通称「青本」の「交通事故損害算定基準」に掲載されています。
これらの本は交通事故を扱う弁護士なら誰もが持っているもので、弁護士でなくても購入可能です。
3つの算定基準の中で弁護士基準が一番高額であり、本を見れば基準が記載されているため、被害者自身が金額を計算することも可能です。
しかし、保険会社が弁護士以外から提示された弁護士基準に応じることは、ほとんどないと言われています。
それは、弁護士は示談が成立しない場合、訴訟を起こす可能性も含めて加害者の保険会社に示談金を提示しているからです。
訴訟となれば保険会社も弁護士を立てる必要が生じて、弁護士基準で提示された金額よりも損失が出ることになりかねません。
そこで保険会社としては訴訟を起こされたくないので、弁護士が提示した「弁護士基準」に、より近い金額で示談を成立させるのです。
弁護士以外が弁護士基準を提示しても訴訟には至らないことから、弁護士基準は弁護士にしか使えないと言われています。
まとめ
今回は損害賠償請求と慰謝料請求の違いについて詳しく解説をしました。
慰謝料も損害賠償の一種ですが、その算定方法が難しいため区別して考えられることが多いです。
算定基準のなかでも「弁護士基準」が一番高い補償金額を得られます。
弁護士基準は弁護士が提示することで有効性を発揮するため、交通事故の被害者になった場合は弁護士に依頼することが大切です。
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弁護士紹介
昭和25年12月5日生まれ。慶應大学法学部を卒業。第二東京弁護士会に所属。弁護士として、30年以上のキャリアを持つベテランの弁護士です。
市民生活の法律問題全般や企業法務を幅広く扱っています。
また、社会問題への参画として日弁連裁判員本部委員を努めるなど、裁判員制度の推進・改善を目指す活動にも貢献。市民の皆様が裁判員として効率的に仕事ができるよう、有志で裁判員経験者との交流団体である裁判員経験者ネットワークを設立し、共同代表世話人として2ヶ月に一度、交流会を開催するなど、積極的な活動を続けています。
裁判員経験者ネットワーク https://saibanin-keiken.net/
弁護士 牧野 茂
- 所属団体
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- 第二東京弁護士会(17922)
- 第二東京弁護士会裁判員センター
- 日弁連刑事弁護センター幹事
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- 裁判員裁判のいま(成文堂)
- 取調べの録画ビデオ~その撮り方と証拠化~(成文堂)
- 「民事陪審は実現できる」(二弁フロンティア2020年1月2月論考)
- 裁判員制度の10年(日本評論社)
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