裁判員制度におけるメリット・デメリットとは?裁判員制度の基礎から解説
裁判員制度は日本の司法システムを支える大切な仕組みとして根付いてきました。
一般市民が、裁判官と協力しながら刑事裁判に携わり、被告人への判断を下す制度として、裁判員制度は機能しています。
本記事では、市民感覚を大切にし、透明性の高い裁判の実現に向けて作られた裁判員制度について、特徴や意義、メリット・デメリットをわかりやすく解説します。
裁判員制度とは一般市民が参加する新しい刑事裁判の仕組み
身近な司法の形として、広がりを見せているのが裁判員制度です。
裁判官と一緒に刑事裁判に参加するメンバーは、私たち市民の中から選出されています。
選ばれる対象は20歳以上の選挙権を持つ方で、公平性を保つためランダムな抽選方式が取り入れられています。
裁判員制度の概略
裁判の場に市民感覚を取り入れる目的で生まれたのが、裁判員制度という仕組みです。
有権者から抽選で選ばれた方々が、裁判のメンバーとして参加します。
裁判員に選出された市民は、裁判官とともに証拠を丁寧に確認し、被告人への判断を下すという重要な役割を果たしていきます。
裁判員制度が導入された背景
2009年からスタートした裁判員制度は、日本の司法の仕組みを大きく変えるものでした。
市民一人ひとりの感覚や物事の捉え方を大切にした裁判を実現することが制度の狙いです。
法律の専門家ではない市民が裁判に加わることによって、誰にでも理解しやすい裁判が実現できると考えられています。
この取り組みを通じて、司法制度への理解が深まり、より信頼される仕組みになることが期待されているのです。
裁判員裁判の進め方
裁判員裁判では、裁判所の裁判官3名と市民から選出された裁判員6名が審理を担当します。
法廷での証拠確認や被告人質問のあと、非公開で話し合いを行い、判決内容を決定します。
判決は多数決で決まりますが、有罪判決には裁判官と裁判員の双方から賛成者が必要です。
裁判員制度で扱われる事件の種類
裁判員制度の対象は、死刑か無期刑が定められた重大な刑事事件に限られています。
ただし、裁判員や、その家族への危害が予想される場合や、暴力団が関与する事件では、安全確保のため裁判官のみで審理を行います。
また、公判期間が長引く複雑な事件や、多くの証人尋問が必要な事件、公判準備に時間がかかる事件でも、裁判官だけで判決を下すことが可能です。
陪審制度や参審制度との違いについて
日本の裁判員制度は、諸外国の優れた司法の仕組みを取り入れながら、日本独自の特色ある制度として発展を遂げています。
各国の司法制度を見てみましょう。
アメリカとイギリスの陪審制度では、市民から選ばれた6人から12人の陪審員が事実関係を判断します。
裁判官は法廷の進行を管理する役割となり、民事事件でも陪審員による判断が採用されています。
ドイツやフランスにおける参審制度の特徴は以下のとおりです。
- 裁判官と一般市民が共同で審理を実施
- 参審員による法律問題への関与が可能
- 国によって参審員の任期や選び方が多様
日本の裁判員制度の主な特徴と比較してみましょう。
- 裁判官と一般市民による合議体の形成
- 市民による事実認定と量刑の判断
- 裁判官による法律問題の専門的判断
- 無作為で選ばれる市民参加の仕組み
このように日本の裁判員制度は、世界の制度の利点を活かしつつ、日本の実情に適した独自の形へと進化を遂げたのです。
裁判員制度のメリットとデメリットとは?
裁判員制度を正確に理解するためには、そのメリットとデメリットを把握しておくことが重要です。
以下では、裁判員制度の主なメリット・デメリットについて解説します。
裁判員制度の主なメリット
裁判員制度の導入によって、主に3つのメリットが見られるようになりました。
- 司法の信頼性向上:市民が直接裁判に関わることで、裁判の過程が透明になり、法廷での議論や判断の仕組みがわかりやすくなるなど、司法制度への信頼が着実に深まっている。
- 判断の公平性向上:一般市民ならではの視点が加わることで、生活感覚に基づく判断が可能になり、多様な経験を活かした審理、社会常識を反映した判決が実現した。
- 法教育の充実:裁判員を経験した市民が、法律への関心を持ち、司法制度への理解が深まり、社会のルールを考える機会を得ている。
裁判員制度の主なデメリット
一方で、裁判員制度におけるデメリットは、以下のとおりです。
【裁判員の精神的負担】
重大事件の判断による強いプレッシャー
被告人の人生を左右する決定への重圧
心身の不調やストレス障害の発症リスク
【日常生活への影響】
長期化する裁判への参加で仕事に支障
家庭生活との両立が困難に
収入面での不安が発生
【判断の質に関する懸念】
法律知識が十分でない市民による判断
専門的な事案の理解が困難
判断能力に不安を感じる場面も
【公平性への影響】
世論による判断への影響
マスメディアの報道による先入観
有罪推定による冤罪発生のリスク
このような問題への対応として、以下の取り組みが必要とされています。
- 裁判員へのメンタルケアの充実
- 参加しやすい環境づくり
- 法律知識のサポート体制強化
- 公平な判断を確保する仕組みづくり
裁判員制度の健全な運営には、これらの課題をひとつずつ解決していくことが必要です。
まとめ
日本の司法制度は2009年に市民参加型の裁判員制度をスタートさせました。
3名の裁判官と6名の一般市民が重大な刑事事件の判決を下す仕組みです。
一般市民の視点を重視するこの制度によって、透明性の高い司法が実現しつつあります。
その一方で、裁判員の心理的な負荷や専門知識の不足といった課題も存在します。
日本の実情に合わせて工夫を重ねた裁判員制度は、より身近で信頼される司法の実現を目指しているのです。
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弁護士紹介
昭和25年12月5日生まれ。慶應大学法学部を卒業。第二東京弁護士会に所属。弁護士として、30年以上のキャリアを持つベテランの弁護士です。
市民生活の法律問題全般や企業法務を幅広く扱っています。
また、社会問題への参画として日弁連裁判員本部委員を努めるなど、裁判員制度の推進・改善を目指す活動にも貢献。市民の皆様が裁判員として効率的に仕事ができるよう、有志で裁判員経験者との交流団体である裁判員経験者ネットワークを設立し、共同代表世話人として2ヶ月に一度、交流会を開催するなど、積極的な活動を続けています。
裁判員経験者ネットワーク https://saibanin-keiken.net/
弁護士 牧野 茂
- 所属団体
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- 第二東京弁護士会(17922)
- 第二東京弁護士会裁判員センター
- 日弁連刑事弁護センター幹事
- 著書
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- 裁判員裁判のいま(成文堂)
- 取調べの録画ビデオ~その撮り方と証拠化~(成文堂)
- 「民事陪審は実現できる」(二弁フロンティア2020年1月2月論考)
- 裁判員制度の10年(日本評論社)
事務所概要
名称 | フェアネス法律事務所 弁護士 牧野 茂 |
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