賃料の減額交渉と減額請求権を行使できる条件
賃貸物件の賃料が高額だと感じる場合、オーナーに対して減額交渉することが可能です。
減額してほしい旨を相談するだけでなく、条件によっては法的に減額請求できる可能性もあります。
この記事では、賃料の減額交渉と減額請求権を行使できる条件について解説します。
不動産の賃料
不動産の賃料はオーナーが自由に決定できます。
不動産の維持管理費などから利回りを計算し、近隣の似たような物件の賃料相場と比較しながら決定することが一般的です。
しかし賃料を決定してから長い時間が経過すると、決定当時は適正だった賃料が不相応になっている場合があります。
時間の経過により、土地建物の価値や景気が変動していくためです。
賃料が適正価格よりも高額になっている場合には、減額交渉が可能です。
賃料は当事者間の合意があれば変更できる
賃料は貸主・借主双方の合意があれば変更できます。
賃料が高いと感じる場合には、オーナーに賃料の減額を相談することも可能です。
ただし特定の理由がない場合、オーナーは減額の相談に応じる必要はなく、聞き入れてもらえないこともあります。
しかし賃料の増減額請求権を行使できる条件を満たしている場合には、法律に基づいて減額交渉できる可能性があります。
賃料の増減額請求権
貸主・借主ともに不適当な賃料によって不利益を被らないよう、借地借家法では賃料の増減額を請求できる権利が認められています。
これにより、土地建物の価値が変動するなどし、現在の賃料が当該物件の賃料として見合わなくなった場合には、適正な賃料に改定するよう請求できます。
増減額請求できる権利は、たとえ契約時に「一定期間、賃料の減額を認めない」とする条件があったとしても行使可能です。
なお賃料の増減額請求を行う際には、賃料が不相応である根拠を示す必要があります。
不動産の価値に比べて賃料が高すぎる場合には減額請求できますが、賃料が安すぎる場合は増額請求されることもあります。
減額請求権を行使できるケース
賃料の減額請求権を行使するには、以下の条件のいずれかを満たさなければいけません。
- 土地建物にかかる税金やその他の負担額が減額した
- 土地建物の価格が下落したり、経済事情に変動があったりした
- 近隣の土地や同じような建物の賃料に比べ賃料が高いなど、賃料が不相応
減額請求権により減額の交渉をしても、貸主が簡単に応じるとは限りません。
当事者間の話し合いで交渉がまとまらない場合、調停や訴訟など裁判所を介して請求できます。
土地建物にかかる税金や経費などが減額した
土地建物にかかる税金や、不動産の維持管理に必要な経費が減額したことを証明できる場合には、減額請求できる可能性があります。
必要経費には次のような費用が含まれます。
- 固定資産税
- 都市計画税
- 建物の維持費
- 修繕費
- 減価償却費
- 損害保険料
建物は経年劣化していくものです。
修繕費は築年数が長くなるほど上昇していく可能性が高く、場合によっては経費の増加を理由に賃料の増額を求められることもあります。
土地建物の価値の下落や、経済事情に変動があった
土地建物自体の価値が下がったり、経済情勢の変動があったりした場合、減額請求できる可能性があります。
土地建物の価値は、固定資産評価額や売買された場合の取引価格などから判断します。
建物の資産価値は築年数によっても変動します。
契約からある程度の年数が経過している場合には、建物の価値が契約時よりも下がっている可能性があり、減額請求できる可能性が高くなります。
経済事情の変動とは、物価や労働賃金などの変動のことです。
消費者物価指数や失業率など社会全体の経済事情から、現在の賃料が適正であるかを判断します。
近隣の物件と比べて賃料が高額
近隣の同じような物件と比べて賃料が高額な場合には、減額請求できる可能性があります。
ただし賃料の決定には、不動産の立地や間取りなど、さまざまな条件が関係します。
似たような物件の賃料はあくまで参考価格です。
似たような物件の賃料の相場が、当該物件の適正な賃料と合致するとは限りません。
減額請求が可能かどうか判断するには、借りている物件の適正な賃料を把握することが大切です。
適正な賃料は、不動産鑑定士に物件を評価してもらうことで把握できます。
現在の賃料が適正な賃料よりも高額な場合、賃料を減額できる可能性が高くなります。
まとめ
この記事では賃料の減額交渉と、減額請求権を行使できる条件について解説しました。
賃料の減額請求権を行使して減額交渉するには、3つの条件のうちいずれかを満たさなければいけません。
請求時には、現在の賃料が当該物件の賃料として不相応であることを示す根拠も必要です。
条件を満たしているか、減額請求が可能かどうかを判断することは、簡単ではありません。
賃料の減額交渉を検討している場合には、弁護士までご相談ください。
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弁護士紹介
昭和25年12月5日生まれ。慶應大学法学部を卒業。第二東京弁護士会に所属。弁護士として、30年以上のキャリアを持つベテランの弁護士です。
市民生活の法律問題全般や企業法務を幅広く扱っています。
また、社会問題への参画として日弁連裁判員本部委員を努めるなど、裁判員制度の推進・改善を目指す活動にも貢献。市民の皆様が裁判員として効率的に仕事ができるよう、有志で裁判員経験者との交流団体である裁判員経験者ネットワークを設立し、共同代表世話人として2ヶ月に一度、交流会を開催するなど、積極的な活動を続けています。
裁判員経験者ネットワーク https://saibanin-keiken.net/
弁護士 牧野 茂
- 所属団体
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- 第二東京弁護士会(17922)
- 第二東京弁護士会裁判員センター
- 日弁連刑事弁護センター幹事
- 著書
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- 裁判員裁判のいま(成文堂)
- 取調べの録画ビデオ~その撮り方と証拠化~(成文堂)
- 「民事陪審は実現できる」(二弁フロンティア2020年1月2月論考)
- 裁判員制度の10年(日本評論社)
事務所概要
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