遺産分割調停とは
被相続人が死亡した瞬間に遺産は相続人に承継されることになっています(民法896条本文)。そして一般的に、被相続人の財産を共同相続人の間で分けるためにどのように遺産を分けるかを話し合いを行います。この協議は遺産分割協議と一般にいわれます。しかしながら、遺産分割協議をしても共同相続人間で話が合わなかったり、行方不明者などがあって協議をすることができない場合が出てきます。
そこでこのような場合には家庭裁判所の遺産分割の調停又は審判の手続を利用することができます(民法907条2項)。つまり遺産の分割を裁判所に任せてしまおうということです。
みんなの利害が絡む遺産分割ですので、共同相続人単独で家庭裁判所に請求をしてもよいかが問題となりますが、1人でも共同で行なっても良いです(民法907条2項)。遺産分割調停の請求のためには、遺産分割を申立てる人が、共同相続人、利害関係人(被相続人の債権者など)を示し、遺産の目録を示さなければならなりません。(家事事件手続法191条以下)。
また、どの家庭裁判所に申し立てていいという訳でもなく自分以外の共同相続人が住んでいる地域を管轄している家庭裁判所か、共同相続人間で合意を得た家庭裁判所に限られます(調停の申立てをする共同相続人が住んでいる地域を管轄している家庭裁判所ではありません)。なお、裁判所に請求する遺産は相続された遺産の全てである必要はなく、遺産の一部での分割調停でも構いません(民法907条2項)。
遺産分割調停で注意しなければならないことは、調停をしたからといって必ず遺産分割が終了するとは言えないということです。調停という制度は家庭裁判官などの第三者の立ち合いで共同相続人間の話し合いを強制的に行わせることができる制度ですが、合意を促すだけで、絶対に合意をしなければならないということはないです。ここには注意が必要になります。
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弁護士紹介
昭和25年12月5日生まれ。慶應大学法学部を卒業。第二東京弁護士会に所属。弁護士として、30年以上のキャリアを持つベテランの弁護士です。
市民生活の法律問題全般や企業法務を幅広く扱っています。
また、社会問題への参画として日弁連裁判員本部委員を努めるなど、裁判員制度の推進・改善を目指す活動にも貢献。市民の皆様が裁判員として効率的に仕事ができるよう、有志で裁判員経験者との交流団体である裁判員経験者ネットワークを設立し、共同代表世話人として2ヶ月に一度、交流会を開催するなど、積極的な活動を続けています。
裁判員経験者ネットワーク https://saibanin-keiken.net/
弁護士 牧野 茂
- 所属団体
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- 第二東京弁護士会(17922)
- 第二東京弁護士会裁判員センター
- 日弁連刑事弁護センター幹事
- 著書
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- 裁判員裁判のいま(成文堂)
- 取調べの録画ビデオ~その撮り方と証拠化~(成文堂)
- 「民事陪審は実現できる」(二弁フロンティア2020年1月2月論考)
- 裁判員制度の10年(日本評論社)
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