離婚における公正証書とは?作成する6つのメリット
離婚するときには、「離婚協議書を公正証書にした方が良い」と聞かれた方もいらっしゃると思います。
この記事では、離婚における公正証書作成のメリットについて解説します。
離婚における公正証書とは
離婚における公正証書とは、公証役場で作成する公文書であり、離婚に関する内容を記載した書類です。
公正証書に離婚の合意内容を記載しておくことで、離婚後に記載内容に関するトラブルを回避できる可能性があります。
離婚する際に公正証書を作成するメリット
離婚する際に公正証書を作成するメリットを6つご紹介します。
証拠書類として活用できる
公正証書は、第三者である公証役場の公証人に作成してもらいますが、作成内容が法的に認められるものでなければなりません。
また、公的文書なので、あとから「言った、言わない」というトラブルを回避するための証拠書類として活用できます。
強制執行認諾条項を記載していれば強制執行ができる
公正証書の作成時に、「強制執行認諾条項」を記載しておけば強制執行できます。
強制執行認諾条項とは、「〇〇は、養育費を契約期日通りに払っていない場合は、強制執行を受け入れること」など、記載内容に従わなかったときに強制執行を認諾する旨の文言です。
公正証書を作成するときには、養育費の未払いがあった場合、法的に養育費を支払う人の財産を差し押さえることも視野に入れるなら、強制執行認諾条項は必ず記載することをおすすめします。
原本を紛失する心配がない
公正証書は、公証役場で作成してもらうので原本は公証役場で保管されます。
夫婦に渡されるのは公正証書のコピーなので、大事に保管し過ぎて保管場所がわからなくなったり、引っ越しなどで紛失したりしても、公証役場に申し出れば再発行してもらえます。
また、基本的に公正証書の原本は、作成年度の翌年から20年間保管されます。
ただし、特別な理由によって保管期間の延長が必要な場合は、延長できる可能性があるので必要なときは公証役場に相談してください。
財産開示手続が利用できるようになる
養育費の未払いなどを理由に強制執行を行う場合は、事前に相手の所有財産を特定する必要があります。
財産の特定方法として、財産開示手続きを行います。
財産開示手続きとは、相手が利用している金融機関や勤務先、不動産の登記名簿上の所在地などを知るための手続きであり、開示期日に相手が裁判所に出頭して状況を陳述します。
その際、財産開示手続きに応じない場合や虚偽の陳述をした場合は、相手に対して6カ月以下の懲役または50万円以下の罰則が科せられます。
(参考元:民事訴訟法 第十一条)
第三者からの情報取得手続によって財産の内容を明らかにできる
「第三者からの情報取得手続き」とは、債務者の財産に関する情報を第三者に提供してもらう手続きです。
公正証書を作成しておけばこの手続きが行えるので、離婚相手の財産に関する以下の情報を得られます。
- 不動産に関する情報:離婚相手名義の不動産の所在地・家屋番号
- 給与に関する情報:給与を支給している勤務先
- 預貯金に関する情報:離婚相手が利用している預貯金口座(支店名・口座番号・金額)
- 上場株式、国際などに関する情報:離婚相手名義の上場株式・国債などの銘柄や数など
(参考元:裁判所 第三者からの情報取得手続きを利用する方へ)
強制執行と併せて行えばより正確な情報を得られます。
強制執行認諾条項を記載しておくことで相手に対して心理的に圧力をかけられる
公正証書に強制執行認諾条項を記載しておけば、相手に対して「必ず支払わなければ、強制執行されて会社などにバレる」という心理的圧力をかけられます。
勤務先や利用している金融機関、賃貸住宅の大家さんなどは、第三者の情報取得手続きが行使されれば相手の情報を提供します。
そのため、強制執行が行われると、会社に居づらくなったり、現在住んでいる居住地にも住みづらくなったりするなど、肩身の狭い思いをします。
また、「離婚すれば養育費などそのうち支払わなくてもいいだろう」とか「自分が遊ぶために給料を使って養育費が支払えない」といった思考や行動に対して圧力をかけられます。
まとめ
今回は、離婚における公正証書作成のメリットについて解説しました。
離婚ではお互いの話し合いによって協議離婚書を作成することが一般的です。
また、協議離婚書を作成したけれど、内容通りに養育費を支払ってもらえないと悩んでいる方が大勢います。
そのため、離婚する際には法的手続きが行える公正証書を作成し、相手に対して養育費を支払わないときは法的手段で請求するという精神的圧力をかけておくことが大切です。
もし、離婚を検討しているなら、感情や勢いに任せず、まずは離婚に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。
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弁護士紹介
昭和25年12月5日生まれ。慶應大学法学部を卒業。第二東京弁護士会に所属。弁護士として、30年以上のキャリアを持つベテランの弁護士です。
市民生活の法律問題全般や企業法務を幅広く扱っています。
また、社会問題への参画として日弁連裁判員本部委員を努めるなど、裁判員制度の推進・改善を目指す活動にも貢献。市民の皆様が裁判員として効率的に仕事ができるよう、有志で裁判員経験者との交流団体である裁判員経験者ネットワークを設立し、共同代表世話人として2ヶ月に一度、交流会を開催するなど、積極的な活動を続けています。
裁判員経験者ネットワーク https://saibanin-keiken.net/
弁護士 牧野 茂
- 所属団体
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- 第二東京弁護士会(17922)
- 第二東京弁護士会裁判員センター
- 日弁連刑事弁護センター幹事
- 著書
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- 裁判員裁判のいま(成文堂)
- 取調べの録画ビデオ~その撮り方と証拠化~(成文堂)
- 「民事陪審は実現できる」(二弁フロンティア2020年1月2月論考)
- 裁判員制度の10年(日本評論社)
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