裁判員になるためには|なれない場合も併せて解説
裁判員制度が始まってから15年経過しておりますが、裁判員をご経験したいと感じている方もいらっしゃると思います。
この記事では、裁判員になるための方法や裁判員になれないケースも併せて解説します。
裁判員になる方法とは
裁判員は「なりたい」と言ってなれるものではないので、どうすれば裁判員になれるのかみていきましょう。
裁判員になる資格
裁判員になるには、「衆議院議員選挙の有権者」の資格を有している者を対象に選挙管理委員会が、くじで選んで裁判員候補者を選出します。
衆議院議員の有権者とは、衆議院議員の選挙権を持つ18歳以上の日本国民です。
有権者であれば、原則として誰でも裁判員に選ばれる可能性があり、たとえ障害がある方でも裁判員としての職務に支障がなければ裁判員になれます。
裁判員の選び方
裁判員は、翌年行われる裁判に向けて前年の秋ごろに選出されます。
また、裁判員の選び方は以下の手順で行われます。
- まず、地方裁判所ごとに管轄している市区町村の選挙管理委員会が、衆議院議員選挙の有権者の中から、くじ引きで選んで裁判員候補者名簿を作成する
- 前年の11月頃、裁判員候補者名簿に登録された人に対して「調査票」(就職禁止事由や辞退事由に該当しているかなどの質問事項が記載されている)が送られてくるが、この時点では裁判員として確定していないので裁判所に行く必要はない
- 「調査票」に必要事項を記載して返送し、内容を確認して明らかに裁判員になれない人や1年を通じて辞退事由が認められる人は裁判所に呼ばれることはない
- 「調査票」で辞退しなかった人や辞退が認められなかった人を対象に、事件ごとに裁判員候補者名簿の中から、くじ引きで裁判員候補者が選ばれる
- くじで選ばれた裁判員候補者に対して、選任手続期日の6~8週間前に「質問票(辞退事由の確認)」を同封した選任手続期日のお知らせが送られてくる
- 「質問票」に必要事項を記載して返送し、内容を確認して辞退が認められるときは、その旨の連絡が届くので裁判所に行く必要はない
- 「質問票」で辞退しなかった人や辞退を認められなかった人は、選任手続期日の当日に裁判所に行く
- 裁判所ではプライバシー保護のため非公開で行われ、裁判長が裁判員候補者に対して、不公平の裁判の有無、辞退希望の有無や理由などについて質問する
- 裁判員候補者の中から、事件ごとに最終的に6人の裁判員が選任されるが、必要に応じて補充裁判員を選任する場合がある
裁判員を辞退できる人とは
裁判所が、法律などで認められた以下のような事情に該当すると認めれば辞退できます。
- 70歳以上の人、学生
- 妊娠中、出産日から8週間以内の人や入退院および出産に立ち会う人
- 重い病気やケガを患っている人
- 親族や同居人の通院などの付添人、養育・介護を行う人
- 重要な仕事があり、自ら処理・対応しなければ著しい損害が生じる恐れのある人
- 父母の葬式など社会生活上の重要な用務があり、別の日に行えない人
- 過去一定期間内に裁判員などの職務に従事した人
- 裁判員候補者などで裁判所に行ったことがある人(辞退を認められた人は除く)
裁判員になれない場合とは
有権者の中には裁判員になれない方もいるので、どのような方が裁判員になれないのかご紹介します。
欠格事由のある人
欠格事由とは、一般的に裁判員になることができない人のことであり、以下に該当する人です。
- 国家公務員法の第38条の規定に該当する人(国家公務員になる資格のない人)
- 義務教育を修了していない人(義務教育を修了した人と同等以上の学歴のある人は除く)
- 禁固以上の刑に処せられた人
- 心身の故障のため裁判員の職務遂行に著しい支障のある人
就業禁止事由のある人
就業禁止事由とは、裁判員の職務に就くことができない人のことを指し、以下に該当する人などです。
- 国会議員、国務大臣、国の行政機関の幹部職員
- 司法関係者(裁判官、検察官、弁護士など)
- 大学の法律学の教授、准教授
- 都道府県知事および市町村長(特別区長を含む)
- 自衛官
- 禁固刑以上の刑に当たる罪に問われて起訴され、その被告事件の終結に至らない人
- 逮捕または勾留されている人
事件に関する不適格事由のある人
事件に関する不適格事由のある人は以下に該当する人です。
- 審理する事件の被告人または被告人本人、その親族、同居人など
- 審理する事件について証人または鑑定人になった人、被告人の代理人、弁護人など、検察官または司法警察職員として職務を行った人など
その他の不適格事由のある人
その他の不適格事由は以下に該当する人です。
- 裁判所が不公平な裁判をする恐れがあると認めた人
まとめ
今回は、裁判員になる方法と裁判員になれない場合について解説しました。
裁判員に選ばれた場合は、慣れないことで不安を感じることもあると思いますが、積極的に参加してみてください。
フェアネス法律事務所の弁護士牧野茂は、裁判員制度を推進・改善するため、裁判員経験者との交流団体を設立し、交流会の開催をしています。
裁判員制度について、興味を持っていただけたら幸いです。
なにかご相談がありましたら、ぜひご連絡ください。
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弁護士紹介
昭和25年12月5日生まれ。慶應大学法学部を卒業。第二東京弁護士会に所属。弁護士として、30年以上のキャリアを持つベテランの弁護士です。
市民生活の法律問題全般や企業法務を幅広く扱っています。
また、社会問題への参画として日弁連裁判員本部委員を努めるなど、裁判員制度の推進・改善を目指す活動にも貢献。市民の皆様が裁判員として効率的に仕事ができるよう、有志で裁判員経験者との交流団体である裁判員経験者ネットワークを設立し、共同代表世話人として2ヶ月に一度、交流会を開催するなど、積極的な活動を続けています。
裁判員経験者ネットワーク https://saibanin-keiken.net/
弁護士 牧野 茂
- 所属団体
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- 第二東京弁護士会(17922)
- 第二東京弁護士会裁判員センター
- 日弁連刑事弁護センター幹事
- 著書
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- 裁判員裁判のいま(成文堂)
- 取調べの録画ビデオ~その撮り方と証拠化~(成文堂)
- 「民事陪審は実現できる」(二弁フロンティア2020年1月2月論考)
- 裁判員制度の10年(日本評論社)
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